中国山地の林業

(2016-04-03 の再掲載)
本日の中国新聞に「中国山地 なるか林業再興」と題した特集記事、関連記事があった。「中国山地」の第5部の1だから、続きがあるのだろう。ただ、機(木)が熟して万々歳なのか、お先真っ暗なのか、読んでも良く解らない。
 実りの時期を迎えつつある、という表現は、10から20年前の話だろう。県内の市町村のいくつかが、主伐と更新に補助金を出すようになったとの旧聞を思い出す。
 郷里へ戻ってすぐ、高名な指導林家を訪ねて、広島の林業の課題について尋ねたことがある。特に解決を要する問題点は無いとのことであった。確かに、当然やるべき事をやる、それ以上のことは不要である。
 ところが、やるべきことができていない林地(所有者というべきか)が少なくないのも事実である。ひと頃は、高性能機械による効率化で、伐採・収穫の低コスト化が推進されてきたが、うまく進んでいない。今度は、自伐林業という標語で、小規模な伐採が推奨されている。根本的な問題は、「まとまった金が要る時は木を売ればいい」という発想であって、これを変えない限り、林業が産業には成り得ない。
 主伐と間伐の区別、間伐の意味が解っていないようだ。「区域を決めて木を全て伐採する」のが主伐ではない。それは、「皆伐」であって、主伐のひとつの形態に過ぎない。主伐の定義は「更新を伴う伐採」である。周囲の木より大きいものを伐採して、立木本数を減らしたならば「間伐」、切った跡に次代となる苗木を植えるか、自生の幼木を助けて、本数を維持、増加させたならば「主伐」。畑のナスを収穫するように、大きくなったものから順に伐っていけば「択伐」であり、択伐の跡に植栽する方法もある。ただし、択伐による「非皆伐更新」がうまくいく場所は、一部のヒノキ林など、限られているのではないか。中部地方の亜高山帯に見られるシラベの縞枯れ更新が良いお手本になる。スギ林では難しい。

生物多様性の維持という観点からは、人工林・天然林を問わず、「皆伐」が殆どなされていないことが現代日本の森林に関する最大の問題。一時期は多すぎたのだが、少なくとも全森林面積の100分の1位は日当たりのよい草地が必要である。造林した苗木にとっても、下刈りを強制される人間にとっても、つらい期間であるが、このときだけ生育できる植物、昆虫などが存在しているからだ。

西部の山地はスギの適地、良い種苗を用いたスギ植林ならば花粉量は少ない

行政が介入するとすれば、地域区分を明確にして、土地条件にふさわしい森林へ誘導しなければならない。大雑把にいえば、雨量の多い芸北山地はスギ林業の適地であって、高い生産性を維持することができる場所が多い。備北山地でスギ林に適した場所は多くない。ヒノキの適地も少ないのではないか。

ヒノキは雨量が少ない地域でも育つが、急傾斜地のヒノキ林は落葉が堆積し難く、問題がある

かつての、たたら製鉄や都市エネルギーの供給原であった、薪炭林の跡地が広大なミズナラ、コナラ、アベマキなどの広葉樹林になっている。バイオマス発電向きの資源ではあるが、安定した供給体制を構築するには相当の困難があるだろう。吉備高原面と南部の低山については、アカマツ林以上の生産性を持つ森林は考えに くい。少しの松くい虫対策で優良林分となれる場所が少なくない。それ以外の場所は放置するに限る。言葉を変えれば「自然の推移に任せる」ということ。

ブナ帯の二次林、アカマツ-ミズナラ林、バイオマス資源としては優良、一部は用材にもなる

スギ、ヒノキの価格の低迷を「木材輸入の自由化の影響」とか、「低価格の外材に押されて」という決まり文句はやめて欲しい。外材が安い理由は労働生産性が日本の何倍にもなるから、国産材が売れないのは価格のせいではない。関係者は皆、よく知っているはずなのに。

天然記念物の指定解除

(2016-03-15 の再掲載)
本日の中国新聞紙上に、「世羅のウラジロガシ」と「原田のエノキ」が枯死、県指定天然記念物指定解除となったとの記事があったので、本編の該当部分を訂正した。

原田のエノキは2011年と2012年に写真を撮影し、昨年6月には枯死しているのを確認していた。
 新聞記事では、2004年9月の台風で枝が折れたのが衰弱の原因のように書かれている。しかし、これは原因と結果の取り違えではないか。材に腐れが入っていたから、台風で折れたのだろう。 生育場所は平坦地で地下水位が高い。根系が酸素不足で枯死し、腐朽菌が侵入していたと思われる。エノキは踏みつけ耐性はあるが、過湿には強くない。里程木のように、盛土に植えられていればもう少し長生きしたかもしれない。ただ、市教委による推定樹齢400年というのは、多くの樹木にとって、ひとつの限界年齢である。

ありし日の原田のエノキ(2012年7月) 主幹が失われ、枝が支えられている

日本の野生植物の改訂新版

現在の日本の標準的な図鑑となっている平凡社の「日本の野生植物」が新シリーズとして改訂され、第1巻が昨年の12月に刊行された。順調にいけば、本年中に全5が刊行されるとのこと。

改訂新版では、樹木編と草本編の区別がなくなり、APGⅢ分類体系で配列されている。という訳で、第1巻はソテツ科からカヤツリグサ科まで。旧版と異なる点は、南西諸島(旧版は沖縄が不十分だった)と小笠原諸島の植物を入れて、日本の種子植物相の全体をまとめた初めての植物誌となったことである。APGⅢ分類体系の配列としたことで、エングラー体系育ちの旧世代には目的の頁を探すのにひと手間かかる。単に、慣れの問題だから仕方ない。「いろは順」から「50音順」に変わった時も同じだったであろう。とにかく、APGⅢ分類体系への移行は一気に進むはずだ。
 図版の配置が巻末にまとめられた。旧版では、本文の近くに少しずつ配置されていて、見易い時もあったが、妙にずれることあった。私には新版の方が見易いようだ。
 学名のシノニムはほとんど省略され、分類上の異論がある場合のみ、イタリック体で示されている。図鑑としての性格上、仕方がないことだろうが、保育社の原色日本植物図鑑シリーズや牧野植物図鑑との異同を明確にするためには必要である。写真では良く解らない部分を図で見ることも多いので、原色図鑑や牧野図鑑の参照も欠かすことはできない。幸い、米倉博士のYLIist で参照できる。広島の植物ノートでも、両図鑑に用いられた学名は、なるべく載せるよう心掛けている。
 本来は、専門家向けの植物誌である Flora of Japan シリーズのⅣ巻(単子葉離)がとっくに出版されているはずだったが、予告アナウンスのみ改訂されている。こちらが、完成しないまま、一般向けの図鑑が先になってしまった。これは残念である。\

旧版の木本Ⅰに添えられていた「植物用語の図解」が新版1の最初に載せられている。5頁から8頁になったのは、個々の図を大きくしたためのようだ。\r\n残念なのは、用語が旧版そのままで、1990年に増訂となった「学術用語集 植物学編」に準じていない。15頁の果実の図で、シラカシが「堅果」となっているが、「殻斗果」または「どんぐり状果」とされるべきである、学術用語集の旧版では acorn とnut を区別せず acorn がなく、すべて nut に含めて堅果と訳していたが、現行の用語集ではnut とacorn を区別して、それぞれ、堅果と殻斗果(どんぐり状果)としている。
 広島の植物ノートも、新シリーズの見解を取り入れて、順次見直しを行う。科の配列については、広島県植物誌にあわせてエングラー分類体系を基本としているが、科の索引はAPGⅢ、50音順も使える。最近の見直しで、ページの下に、現在の科の隣りの科へ進むボタンを付けた。ここをAPGⅢの順序にしなかったのは旧世代への配慮である。

亥の子祭り、トンボソウの修正

気が付いたら、今年の「亥の子祭り」が終わっていた。イノコヅチの語源と結びつける写真が調達できない。下の写真は3年前に旧市内で撮影してもらったもの。以前の記事「イノコヅチと胴突、亥の子」と見比べて欲しい。

亥の子石を持ち上げ、落として、「亥の子もち」を搗いている様子

再見直しは、アオギリ科まで進んだ。記事の修正、写真の追加・差し替えの他、1頁の種数を少なくして、科名索引の長さを超えないようにしている。検索表の追加は、ごく一部でしか実現できていない。

読者からのご指摘を「郵便受け」にいただき、コバノトンボソウの写真を削除、トンボソウの写真を替えた。言われてみればその通り、当方の間違いであった。こういう指摘はありがたい。

樹木の種苗移動ガイドライン

自然林の中や周縁部に樹木を植えたがる人が少なくない。広葉樹林の中に針葉樹とか、明らかな外来種ならば植えたことが判るからまだ許せるが、その地域に分布していそうな樹種を植えるのは、とんでもない自然破壊ではないだろうか。国定公園区域の中核部分にもそのような例が見受けられる。
 同じ樹種であっても地域によって遺伝的に異なる集団があるから、むやみに種苗を移動させてはならないという法律がある。林業種苗法」(昭和45年法律第89号、最終改正:平成26年法律第67号)。この法律には、以下の条文がある。これは、「健全な成長」のための規則であって、「遺伝子攪乱を防ぐ」という概念は乏しい(無い)。
(種苗の配布区域の制限)
 第二十四条  農林水産大臣は、造林の適正かつ円滑な推進を図るため特に必要があると認めるときは、農林水産省令で定めるところにより、一定の区域(外国における一定の区域を含む。)において採取され、又は育成される種苗について気候その他の自然条件からみておおむねその樹木としての生育に適すると認められる区域を配布区域として指定することができる。
 2  生産事業者及び配布事業者は、種苗につき前項の配布区域が指定されているときは、当該配布区域以外の区域を受取地として種苗を配布してはならない。ただし、林業の試験研究の用に供する場合その他特別の事情がある場合において農林水産大臣の承認を受けたときは、この限りでない。\
 具体的な「配布区域」は、昭和46年農林省告示第179号(最終改正:平成22年農林水産省告示第545号)で示され、すぎ、ひのき、あかまつ、くろまつの4樹種について、種苗の移動を制限している。

広島県の場合は、北部(旧山形郡、旧高田郡、三次市、庄原市、旧比婆郡)と南部に区分けされ、それぞれ、スギの第四区と第五区、アカマツの第三区、クロマツの第一区と第二区に分類されている。そして、北部を起源とする種苗は北部・南部で植栽することはできるが、南部を起源とする種苗は北部に持ち込むことができない。ヒノキは県内全域が第二区なので、県内の移動は可能。(県外移動については告示を参照)
 この考え方広葉樹にこそ必要なのだが、上記の告示はいわゆるネガティブリストであって、表に書かれていない樹種は移動が可能である。情報が十分でなければ、安全策として「原則移動禁止」、指定樹種のみ可能というポジティブリストであるべきと考えていた。

この度発行された「樹木の種苗移動ガイドライン」は、広葉樹を含めた主要43樹種について遺伝子攪乱を防ぐために、どの地域由来の種苗を使うのかを示したものである。もちろん、できるだけ同じ地域の種子を使うの原則であるが、入手が不可能な場合に代替できる範囲を示したものと心得るべきである。
 ブナを例にすると、広島県内に植栽する種苗は中央構造線より北側の中国地方西部、四国北部、九州北部に限る。島根県東部、四国中央部、九州中部のものは決して持ち込んではならないことが、明瞭に図示されている。
 樹種によっては情報が十分でないものがあるが、安易な種苗の持ち込みが良くない結果をもたらすであろうことは解るはずだ。

津村義彦・須山佳久(編)地図でわかる樹木の種苗移動ガイドライン、170頁、文一総合出版、5,500円+税

今日が端午の節句

本日6月20日は旧暦の5月5日、本来の端午の節句です。
 これまで、かしわ餅のことを何度も書いてきました。少しづつですが、ウェブ上でも本当のことが知られるようになって来たようです。ただ、不思議なことに、自分が調べたかのように断定される方が多く、文章まで似ているまるはそっくりなのが多いようです。
 ひとこと、引用元を書いておくのがそんなに難しいことでしょうか。

それはさておき、「かしわ餅」の定義、全国的なサルトリイバラと江戸発祥のカシワの葉の違いなどを、特集-Ⅳ かしわ餅のまとめとしました。

この季節に、かしわ餅の葉はどうなっているか?
 まず、サルトリイバラの葉、2週間前の6月6日、内陸の山麓部、十分に育っています。

6月6日のサルトリイバラの葉

カシワの葉、さらに2日前の6月4日、中国山地の標高1,100m辺りの風衝地、硬すぎず、頃合いです。

6月6日のカシワの葉

山菜アドバイザー

「山菜アドバイザー研修」の本年度の受講案内が発表されました。この研修は、「山菜アドバイザー」の養成と資格認定を行うもので、林野庁の補助事業として始まったのですが、予算削減により日本特用林産振興会の単独事業として2年毎に行われ、本年は第6回となります。毎年でないのは、「きのこアドバイザー」と交互に行われるためです。

山菜を採って食べることは自然を楽しむ優れたレクリェーションの一つです。同時に、山菜は山村にとって貴重な資源にもなっています。山菜利用を促進することは需要の拡大、地域おこしのために必要です。ところが、ルールを守らない一部の入山者によるトラブル、知識不足による食中毒の発生などの問題も発生しています。
 このため、山菜採りを楽しむ一般消費者、山菜によって収入を得ている人々の双方に、必要なルール・マナー、山菜等全般についての知識や利用方法等を指導・助言できる専門家としての「山菜アドバイザー」を育成することがこの研修の目的です。

研修の内容は以下のとおり:

  • 山菜文化の継承、山菜のルールとマナー、山菜アドバイザーとして
  • 山菜の分類・同定、山菜の生理生態、山菜の栽培と優良品種の選抜、
  • 山菜と健康とのかかわり、山菜の新しい料理法、
  • 実地研修(観察等)

この研修は、ある程度の基礎知識を有している人を対象にしているので、関係組織長からの「推薦状」と「山菜に関する所感文」の提出が必要となっています。関係組織とは、農林業の事業体・組合等の他、山菜同好会や植物観察会などを含みます。

詳しい内容は、日本特用林産振興会の募集案内を見てください

センダンと栴檀、白檀

5月始めの「かしわもち」が一段落して、季節の花である「センダン」をキーワードとする訪問が多くなった。

センダンの花

和名のセンダンと栴檀とは関係がないことは以前に述べた。しかし、栴檀が白檀の別名であるとの間違った記述が氾濫しているので、補足してみたい。

混乱の原因は漢名と漢字名、中国名の混同にある。昔の書物には「漢名」が見出しになっていて、その後に「和名」が書いてある。和名表現について古代代には漢字を使用した「万葉仮名」であったが、1700年代になるとカナ書きが普通になり、現代まで続いている。
 センダン(漢名:楝)を例にすると、深根輔仁の本草和名(918)では「亜布知」、源順の和名類聚抄(935)では「阿布智」、貝原益軒の大和本草(1709)や新井白石の東雅(1719)では「アフチ、「俗にセンダン」と書かれている。
 漢名を最初に書くのは、それが学術的な標準名(正名)であったためである。当時の本草学(植物学)は中国を手本としていたので当然である。ただし、日本の植物はすべて中国にもあって正しい分類が行われている、との大前提の上に成り立っている。しかも、間違いを正す仕組みがなかった。
 リンネによって、現在の学名である、ラテン語の二名法が認められたのが1753年、命名規約が合意されたのが1905年である。命名規約によって、新しい植物を発見したとき、すでに別の名前がついていたとき、間違いが見つかったときなどに訂正する手順が出来上がったので、安心して使えるようになった。
 ヨーロッパの人々にとってのラテン語は日本人にとっての漢語(漢文)と同様に「知識人の共通言語」であった。多くの日本人にはラテン語名より漢名の方が解り易いが、間違いを訂正する仕組みがないので、自然科学の分野ではラテン語の学名を使うしかない。
 飯沼,慾斎の草木図説(1856)では、カナ書きの和名に加えて、ラテン語名(カナ書き)が書かれているので、この頃から正名としての漢名の役割が終わり、単に外国名の一つ(中国名)になったはずである。にもかかわらず、「漢名」と「和名の漢字表現」、「中国名」をごっちゃにするから訳が分からなくなる。日本で栴檀=白檀としているが、中国名の栴檀と白檀は別のものである(少なくとも現代の中国名では)。

表に示すように香木のビャクダンの中国名は檀香か栴檀である。元々、ベンガル語の chandan を漢字で栴檀としただけである。「白檀」と書くとハイノキ科のカラサワフタギになる。
 よって、「栴檀は二葉よりにほひ、梅花はつぼめるに香あり」という撰集抄の文章にあらわれた栴檀は、Santalum album なので、そのままでよい。ただし、「せんだん」と読むのではなく、「チャンタン」と読むのだから、「いろはかるた」では、「せ」でなく、「ち」の札となる。

結論:栴檀はセンダンではなく、チャンタンと読む、白檀は全く別の植物。漢名と中国名は別物、国際化時代に「漢名」や「和名の漢字表記」を使うのは止め、動植物名表記の基準であるカナ書きを徹底しなければならない

スギ花粉を少なくする

晴れが続くとスギ花粉の影響が出る。2月下旬からアレルギーを抑える内服薬を服用しているのだが、効果が良く分からない。薬を服用するのを止めて見ても、薬効が無くなったのか、花粉の量が多かったのか、区別できないからだ。
 花粉さえなければ発症しないのは確か。この時期に奄美・沖縄や小笠原に行くと、3日目くらいには完全に症状が消え、戻ったときにはすぐに発症する。羽田空港の上空の「もや」が目に入ったと同時にくしゃみが出たこともある。広島は、芸北地域を除いて、スギが少ないので大したことはないだろうと思っていたが、やはり、この時期には症状が出るので薬とマスクは欠かせない。

多数の雄花を着けたスギ

3月1日の中国新聞6面の[広場]に「少花粉スギの普及急務」という大きな見出しの記事が載った。編集員の杉本氏による記名記事である。内容は、スギの少花粉品種が実用化されたにもかかわらず、普及が遅れている。とりわけ、中国地方、中でも広島・島根両県の遅れが目立つという。ただ、普及しない原因と対策についての踏み込みは物足らない。県の目標がどうなっているのか、それに対する検証がどうなっているのか書かれていない。

新聞記事の翌々日に、日本森林学会から、「花粉症研究最前線」を特集した「森林科学」の73号が届いた。最近の研究性が要領よくまとめられているので、要点を紹介し、広島県の問題点を考察する。

「花粉症研究最前線」の要点

  1. スギ花粉症に関わる国民の経済的負担は、1998 年で2,860 億円と推定、約1 兆円との説もある
  2. 花粉飛散情報は高度化し、一部の地域では詳細な予報がなされている
    • 36年間の継続観察によれば、最近の10年は、以前の約2倍
    • ヒノキ、ブナ、ハンノキ、マツ、イネ科についても実施
  3. 抗ヒスタミン剤の開発・改良、減感作療法の研究
    • アレルギー患者を対象とするため、アナフィラキシー誘発\r\nの危険性の無い治療ワクチンが必要であり、まだ完成していない
    • 減感作療法効果のあるコメの品種も作出されている
  4. 花粉発生源対策としての森林管理(間伐等)
    • 雄花の豊凶に合わせるなどの工夫が必要
  5. 無花粉スギや少花粉スギなどの花粉症対策品種の開発n
    • 「少花粉スギ」の苗はすでに各地域で普及
    • 7 県(富山、青森、福島、新潟、茨城、神奈川、三重)から多様な無花粉スギが選抜されている
    • 無花粉スギには種子ができないので、挿し木繁殖するのだが、単一クローンの一斉植栽は避けたい
    •  「立山 森の輝き」はF1雑種だから、種子で供給できる
    • 遺伝子組み換えによる無花粉スギも作出されている

広島県のスギ林の現状
広島県の森林については「林務関係行政資料」に要領良くまとめられているので、最新の平成24年度版をひも解く:

  • 広島県の森林面積 611,893ha のうち、民有林が563,180ha(92.04%相当)
  • スギ林は48,152ha(民有林の8.55%相当)
  • H18~22年のスギ人工造林の実績は42ha、年平均8.4ha\r\n(ヒノキは、それぞれ、158,5ha、317ha)
  • H18~22年のスギ山行苗需要は134,000本、年平均26,800本、\r\n同期間の生産量は 93,000本、年平均18,600本で大幅に不足

前記の新聞記事による広島県の少花粉スギ苗生産計画、2014~16年度 0本、2017年度1,200本、2018年度 2,100本は如何にも少ない。1haあたり2,000本位は必要である。
 もっと問題なのは、スギ人工造林実績が平均8.4ha しかないという点である。スギ人工林の標準的な伐採年数は40~50年であるが、長期化傾向を勘案して60年としても、毎年800haは伐採・収穫する必要がある。そうでなければ、森林の生態系を適切に維持することはできない。何故か、間伐ばかり強調され、「~間伐材を利用して~」という文言を良く目にする。間伐は植栽を伴わないので、樹種・品種の更改には結びつかない。一時的に草原状態を作り出す皆伐(主伐の一種)がほとんど無くなったことが、地域の生物多様性に悪い影響を及ぼしていることも考えるべきであろう。

念のために付け加えると、既に作出された少花粉・無花粉スギで現在のスギ林を置き替えることには慎重であるべき、というのが私の持論。少花粉品種について、既存のスギに比べて花粉量が**%というときの「既存のスギ」が問題であって、きちんと選抜された推奨品種による「育種苗」か、苗木不足の時代にいい加減に作られた「多花粉・多種子」品種なのかを確かめる必要がある。本来の手続きによって選ばれ、育成された苗木であれば、それ程多くの雄花を着けることはないはずだ。

森林と二酸化炭素、 その誤解を解く (3)

京都議定書の理念と「地球温暖化対策推進大綱」
「地球温暖化対策推進大綱」に基づいて、間伐等が推進されてきた。ここで、国際合意に基づく政策の推進と炭素吸収に関する森林の働きの科学的事実の混同が、多くの誤解を生んでいる。京都議定書の第1約束期間(2008~2012年)は終了し、わが国は責務を達成しているが、次の段階はかなり厳しくなることが予想される。

1.気候変動枠組条約と京都議定書
 人間活動によって大気中の温室効果ガスの濃度が増加し、地球全体の地表及び大気の温度が歴史的な変動より速い速度で上昇し、自然の生態系及び人間の生活環境に悪影響を及ぼすことが心配されたことから、気候変動に関する国際連合枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change , UNFCCC)が1992 年5 月9 日にニューヨークで採択された。日本は、同年6月の国際連合環境開発会議で署名、1993 年5 月に受諾した。その後、1994年3 月に条約が発効したが、具体的な温室効果ガスの削減方法は、1997 年12 月の第3回締約国会議(UNFCCC COP3)で採択された「京都議定書」で定められた。森林との関係については、吸収源の取り扱いを定めた3条3項と4項に規定されている。

  • 京都議定書では、対象ガスをCO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6 の6種類として、
  • 1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少に係る排出及び吸収を限定的に考慮する。
  • 目標期間:2008~2012年(平成20年~24年)の5年間を第1約束期間とする。
  • 日本の排出削減目標:6%(1990年の数値に対して)、
    と定められた。

ここで問題となったのは、基準年(1990年)に対する増減を見るということであって、二酸化炭素排出・吸収量の絶対値ではなく、人口比、経済力比でもないということである。
 学校での成績に例えれば、これまでの試験の総得点を無視して、期末試験と中間試験の点数の差を最終成績にする。中間試験の点数が20点の者は期末試験を頑張って80点とすることが可能である、中間試験で95点を得ていれば、期末試験で満点を取っても最終成績が5点になるということである。
 吸収源としての森林については、新規植林と再植林で増やした森林面積が得点となるので、1990年以前に森林を大きく減らした国は得点できる可能性が大きく、日本のように森林をぎりぎりまで残している国は点数を得ることができない
 この問題に対処するための手段が3条4項の「 追加的人為的活動」である。科学的及び技術的助言のための補助機関会合や締約国会議で議論されたものの、米国の離脱、日本の抵抗などで難航してきたが、COP6再開会合、COP7を経て、「マラケシュ合意」として政治的に決着した。

マラケシュ合意に基づき、平成 14 年3 月、地球温暖化対策推進本部は、我が国の森林経営によって、1,300 万炭素トン程度の吸収量の確保を目標とする地球温暖化対策推進大綱を決定、実行に移した。

7. 温室効果ガス吸収源対策の推進
(1) 森林・林業対策の推進\r\n森林・林業基本法に基づき2001 年10 月に閣議決定された森林・林業基本計画に示された森林の有する多面的機能の発揮に関する目標と林産物の供給及び利用に関する目標どおりに計画が達成された場合、京都議定書第3条3及び4の対象森林全体で、森林経営による獲得吸収量の上限値(対基準年総排出量比3.9%、4,767 万t-CO2)程度の吸収量を確保することが可能と推計される。
 上記は森林・林業基本計画に基づく試算であり、今後、算定方法等について精査、検討が必要である。また、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合は、確保できる吸収量は対基準年排出量比3. 9%を大幅に下回るおそれがある。吸収量の確保は、政府はもとより、森林所有者、林業及び木材産業の事業者、更には地方公共団体や森林及び林業に関する団体を含め、関係者全体による多大な努力が必要である国民的課題であり、森林・林業基本計画の目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。
 わが国に必要な吸収量を確保するため、以下に示す施策を強力に推進するとともに、吸収量の報告・検証体制の強化を図る。

① 健全な森林の整備
 ア 森林の機能区分に応じた、複層林化、広葉樹の導入等を含む多様な森林整備の展開
 イ 緊急に除間伐等の保育の実施が必要な森林において、必要な施業を推進
 ウ 伐採後の更新(再造林)、下刈等の推進
 エ 無立木地、荒廃地、自然災害を受けた森林、耕作放棄地等において、植林、保育等を推進(以下略)
 上記、ア、イ の施業は、本来、炭素固定・吸収量を一時的に減少させる。

 先に述べたように、日本の森林は二酸化炭素を吸収してきた、この森林に対して間伐等の手入れを行うことは吸収量を減らす行為である(科学的事実)。ところが、その吸収量は京都議定書に基づく日本国の二酸化炭素削減義務である1990年比6%には勘定されない。手入れを行った森林が吸収する量のみを削減量として勘定するということである(政治的合意)。
 この政治的合意の背景には、日本の森林が健全な状態で保全され、蓄積を増やしているにも関わらず、十分に利用されていない。そして、自国で必要とする木材資源は外国から輸入し、結果的に世界の森林減少に手を貸しているという見方がある。例えば、自然保護団体のWWFが EUROPEAN FOREST SCORECARDS 2000 という調査で、ヨーロッパ諸国の森林の現状と政策を99の要素で採点している。その中の一つに:

要素 1.8 各国の収穫可能量に対する年間収穫レベル
 4点: 平均年収穫レベルは、収穫可能量の70%以上で、100%を超えない。
 3点: 平均年収穫レベルは、収穫可能量の60~69%。
 2点: 平均年収穫レベルは、収穫可能量の50~59%。
 1点: 平均年収穫レベルは、収穫可能量の40~49%。
 0点: 平均年収穫レベルは、収穫可能量の40%未満、又は100%を超える。
(上記には収穫可能量の精度と、伝統に基づく森林測定の精度も含まれる)
 この採点要素では、オーストリア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スウェーデン、スイス、トルコが満点の4、東欧諸国とスペイン、イギリスが2点となっている。もし、日本を採点すれば0点のはずだ(収穫可能量の40%未満しか収穫していない)。


まとめ
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書に基づく二酸化炭素排出量の削減義務の実行にあたって、マラケシュ合意(2001)によって、放置状態にあった森林に手入れを行うことで吸収量を算定できるルールが認められた。この措置は、必ずしも森林の吸収量を増加させることにはならないが、地球規模で見た場合には森林減少・劣化を防ぎ、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑える働きがある。さらに、我が国の森林の健全性の向上、林業・木材産業の発展、山村振興に大きく寄与することから、極めて優れた取り決めと言える。