幾つか気になる点を挙げると、ブナ科の果実が「堅果」とされていた。第1巻の感想で述べたとおり、巻頭の用語図解に合わせたのであろうが、現行の学術用語集とは異なっている。90頁の「堅果」はacornであり、nutではない。 オトギリソウ科のコケオトギリについて、「Flora of Japan 2a」(N.K.B.Robson, 2006)で、ヒメオトギリと同種で「Variant」とされたものが、旧版と同様に別種とされ、Robsonの見解については全く言及されていない。The Plant List では Flora of Japan 2a の見解が採用されているので、説明が欲しいところである。 フウロソウ科のヒメフウロについて、産地に広島県が加えられた他、「北海道と本州の各地で栽培品が逸出・帰化している」と明記されている。
改訂新版では、樹木編と草本編の区別がなくなり、APGⅢ分類体系で配列されている。という訳で、第1巻はソテツ科からカヤツリグサ科まで。旧版と異なる点は、南西諸島(旧版は沖縄が不十分だった)と小笠原諸島の植物を入れて、日本の種子植物相の全体をまとめた初めての植物誌となったことである。APGⅢ分類体系の配列としたことで、エングラー体系育ちの旧世代には目的の頁を探すのにひと手間かかる。単に、慣れの問題だから仕方ない。「いろは順」から「50音順」に変わった時も同じだったであろう。とにかく、APGⅢ分類体系への移行は一気に進むはずだ。 図版の配置が巻末にまとめられた。旧版では、本文の近くに少しずつ配置されていて、見易い時もあったが、妙にずれることあった。私には新版の方が見易いようだ。 学名のシノニムはほとんど省略され、分類上の異論がある場合のみ、イタリック体で示されている。図鑑としての性格上、仕方がないことだろうが、保育社の原色日本植物図鑑シリーズや牧野植物図鑑との異同を明確にするためには必要である。写真では良く解らない部分を図で見ることも多いので、原色図鑑や牧野図鑑の参照も欠かすことはできない。幸い、米倉博士のYLIist で参照できる。広島の植物ノートでも、両図鑑に用いられた学名は、なるべく載せるよう心掛けている。 本来は、専門家向けの植物誌である Flora of Japan シリーズのⅣ巻(単子葉離)がとっくに出版されているはずだったが、予告アナウンスのみ改訂されている。こちらが、完成しないまま、一般向けの図鑑が先になってしまった。これは残念である。\
「Flora of Japan 2a」では、なんと、両者の区別は困難とされ、「品種」レベルでもなく、「Variant」という「形」にされている。それにしては、「形」毎の記述は詳しい。オトギリソウ科の執筆者はN.K.B.Robson。オトギリソウでは品種を細かく分けているから、大まかに分類する主義ではなさそう。やはり、別種として区分するのは無理なのだろう。この見解に従うことにした。ところが、同書にはにはトモエソウが見当たらない。索引にも無い。Robsonは基準標本が明示されていないトモエソウについて、Lectotypeを選定した当人であるから、執筆漏れ(?)は腑に落ちない。