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特集-Ⅵ 早生樹造林で学んだこと


モリシマアカシアに騙された話 (8)失敗だけど

生産力増強策としては失敗だが
 樹種を替えても、その土地の生産力を上回る収量は得られない。下手をすると、潜在的な生産力を大きく下回ることもある。モリシマアカシアの場合も例外ではなく、せき悪地への造林は失敗した。

 かつてのモリシマアカシア造林地は跡形もなく、小規模な林分が少しだけ残っているだけである(写真)。そのため、次の世代が同じ失敗を繰り返さないためにも、国・県による早成樹造林の推進は失敗であった、と結論付けようとした。しかし、ある人のつぶやきを聞いて、私の浅はかさを知った。

 「確かに、今は残っていない。ミカン畑やヒノキ林に替わってしまった。しかし、あの時代、都会はともかく、この辺りは貧しい山村だった。それが、アカシア造林のために、隣の村からも農家の嫁さん達が集まってきた。高度成長の波が離島に来るまで、、、あれでみんな助かった。あの時、造林事業を引っ張ってきた人のことは決して忘れない。」

 自分が未熟であることを思い知らされた。生態学的見方だけでなく、経済的な見方も必要ということは解っているつもりであったが、社会の背景という点までは及ばなかった。ただし、在職中にはこのことをあまり言わなかった。公費の目的外使用である。そういう効果を期待した計画は正しくない。成林できなかったのは恥である。

 三つの輪を重ねた図を「森林のしくみ」で用い、造林の講習に使っていた。この社会の要請とは、保安林の伐採制限、補助金によって推進される行政指導を例とした。
 根本的な目的はもっと単純にできる。本庁勤務時代、前任者から「林野庁の究極目的は山村振興だからな」と言われ、奉職後20年も経って初めて、己の立場を認識した次第である。

 そういえば、初任者研修の内容が国有林野事業のことばかりだったのを不満として、同期17名で団体交渉を行った。「話が違う、私たちは日本の林業に関わりたい」と。しかし、明快に話をしてくれる幹部はそこにいなかった。

 トップがちゃんとしていれば思想は浸透する。国から県への補助事業の実施設計に関わっていたとき、ある県の担当者は、いつも、細かい注文を付けてくる。例えば、治山堰堤の作業道ひとつでも、工事終了後に他の用途に転用できるよう、配慮して位置決めをする。もちろん、そうすべきとの意見を、造林上の観点から補強するのが私の役割と心得た。聞けば、「一石二鳥・三鳥を考慮していないと、知事に怒鳴られる。」とのこと。正しいパワハラだ。


施業方針を定める三つの視点


最後に見たモリシマアカシア造林地、ヒノキ林(左)に替えられつつある


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