特集-Ⅵ 早生樹造林で学んだこと
モリシマアカシアに騙された話(1)きっかけ
モリシマアカシアに騙された話は、2016年の11月から facebook 上に連投したもの。一部を修正して再渇する。
「モリシマアカシアに騙された」というのは、林学の「り」の字をやっと覚えたばかりの私が、上司や先輩方から教えられていた
・モリシマアカシアはやせ地でも良く育つ
・モリシマアカシアの種子は適切な処理をしなければ発芽しない
・モリシマアカシアは萌芽更新をする
などの「常識」を、ことごとく、覆された経験を表現したものである。モリシマアカシアが悪いわけではない。
「早生樹・早成樹」という言葉は、十数年おきに現れるキーワードで、森林・林業にとっての「うまい話」に使われているが、“成功”した事例は皆無である。
広島県でモリシマアカシアが造林されたのは、主に島嶼部であり、せき悪地を早期に緑化するために、
ソウシジュやフサアカシア、
ヤシャブシ類と共に植えられ、現在でも残っている。

開花期のモリシマアカシア(
Acacia mearnsii De Wild.)
私は1980年3月に林業試験場九州支場に移動となった。赴任先の造林第二研究室でバイオマス生産ののプロジェクト研究が行われることになり、モリシマアカシアの生産性と更新に関する研究を分担することになった。この手のプロジェクトとは、新しい事実や法則を見つけることではなく、過去の調査例から推定されるシナリオを「実証」、実用化することなので、シナリオが間違っていると苦労する。
与えられた命題は、モリシマアカシアの「高い生産性」を維持しつつ、「天然更新」によって「低コスト」でバイオマス(パルプ、燃料)生産する施業体系を組み立てること。
戦後まもなく、「早生樹」が流行って、東北地方のコバノヤマハンノキ、西日本のモリシマアカシアの2樹種は特に期待された。モリシマアカシアは瀬戸内地方ではせき悪地の緑化樹種として、九州ではパルプ、タンニン生産のため、積極的に造林されている。ただし、私が手掛けたころには、当初の造林地はほとんど無くなっていた。実際に試験地を設けたのは天草下島の北部である。
1.根粒を持つマメ科植物で、やせ地でも良く育つ。
2.早生樹で、10年程度でパルプ用材として収穫できる。
3.一度植えれば、次回以降は萌芽で容易に更新する。
以上が、先輩から教えられた「事実」、文献情報もあり、間違いではないらしい。しかし、そのまま信じて、えらい目にあった人も少なくない。福岡県、熊本県では多額の補助金が計上されて、かなりの面積で造林されたようだ。しかし、残っている林分はごく少ない。「林業としては失敗」だろう。だが、そう決めつけるのも間違い。林業とは何か、多くのことを学んだ最初の師匠がモリシマアカシアであった。

皆伐翌年のモリシマアカシア林分

皆伐後、放置して、成林したモリシマアカシア林分(8年生)
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