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特集-Ⅵ 早生樹造林で学んだこと


モリシマアカシアに騙された話(4)種子の発芽条件

萌芽更新ではなかった。

 立地条件が良い場所では、伐採と放置で、天然更新が行われるから、植林は不要、というのはすぐに分かる。ただ、萌芽と思い込んでいたのは間違い。そう言われ、疑いもなく、信じていたのだ。

 第一次(昭和30年代?)早生樹研究(この頃は早生樹と呼んだ)に関わった大先輩が、私たちがバイオマス・プロジェクトでモリシマアカシアを再度取り上げたことを聞き、「アカシアの種子は、山火事か硫酸処理をしないと絶対に発芽しないからな」とアドバイスして下さった。アカシア属は典型的な「硬実種子」であることはどの教科書にも書いてある。若齢の更新林分を見ると株立ちのように見えたので、萌芽であることを疑わなかった。


更新したモリシマアカシア林分、いくつかは株立ちをしている
萌芽更新といわれて疑わなかったが、後に実生と判明した

 だが、そのうちにおかしいと気づいた。萌芽苗が小さく、地中から出てくるのだ。根萌芽か?
  2年目の初夏、現地で弁当を食べていると、大きなアリが、こぼれた飯粒を運んで行くのを見た。と、アカシアの種子を運んでいるアリがいるではないか。しっかり咥えて、巣穴に入って行った。そばには、発芽している種子もある。手に取って見た。
何のことはない、普通に発芽しているではないか。皆が言っていたのは嘘なのか?
 やっと解った。目の前にある種子は、まだ「硬実」ではない。さやの中や、出たばかりの種子は表面のゼラチン質が湿ったままなので、容易に水を吸うようだ。
 
 発芽試験は、手順通りに集めて、風乾・精選した種子を使う。一度でも乾燥すると硬実化するのだが、アリはさやから出た種子を、何もしないで運び、土に埋める(巣に貯蔵する)。硬実化するひまがない。私たちが「不真面目な」発芽試験を行うと、約一割が発芽した。そして、落下種子数はヘクタール当たり430~1,920万粒/ha・年に達する。
 天然更新の目安である「更新稚樹が1万本/ha」は軽く超える。実際、当年の秋に5~ 15万本/haが発芽、翌春には樹高0.5~ 0.8mになった。

 改めて調べると、切株からの萌芽はほとんど無い。というより、古い切株が残っていない。じきに腐朽して地面の穴となるようだ。
 何故、先輩方が萌芽更新と思い込んだのかはわからない。私も、他人の言うことを鵜呑みにするという間違いを犯した。さりとて、先輩を疑うべきだったとも思えない。


伐採翌年のモリシマアカシア林分、切り株からの萌芽は見当たらない


モリシマアカシア林分の更新調査プロットの様子、新しい苗には番号をつけて追跡している


モリシマアカシアの実生、さやから出て、一度も乾燥していないと発芽できる


若木の段階まで成長したモリシマアカシア


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